包丁あれこれ
ステンレス刃物鋼について
ステンレス刃物鋼について
一般にステンレス鋼と呼ぶ金属は、SUS304を指します。このSUS304は鉄(Fe)にクローム(Cr)を18%、ニッケル(Ni)を8%を添加したもので18-8と表記したりします。クロームは鉄が錆びる前に酸化クローム膜を形成するため鉄が錆びにくくなります。また、ニッケル(Ni)を添加することで耐酸性が増します。しかしこのSUS304は、炭素(C)が添加されていませんので、焼入れ処理をしても硬くならないので刃物には使用できません。
刃物で使用するステンレス鋼は、炭素鋼にクローム(Cr)を10.5%以上加えたものをいいます。
ステンレス刃物鋼=鋼{鉄(Fe)+炭素(C)}+クローム(Cr)10.5%以上 |
刃物に炭素(C)は必要不可欠で、ステンレス刃物鋼にも炭素(C)が含まれます。炭素(C)は、鋼を錆びやすくする特性があります。より炭素(C)が少ない鋼が錆びにくいものになりますが、高い硬度が得られず切れない刃物になります。逆に炭素(C)を増やすと硬度は高くなり、よく切れる刃物になりますが、錆びやすい刃物になります。
ステンレス製包丁は錆びないのではなく、錆びにくいということになります。
包丁に使用するステンレス刃物鋼は何種類もあります。
- 鉄(Fe)+炭素(C)+クローム(Cr)10.5%以上+モリブデン(Mo)
モリブデン鋼と呼ぶことがあります。 - 鉄(Fe)+炭素(C)+クローム(Cr)10.5%以上+モリブデン(Mo)+ヴァナジューム(V)
モリブデン・ヴァナジューム鋼(MV鋼)と呼ぶことがあります。
モリブデン(Mo)は焼入性、ヴァナジューム(V)は耐摩耗性の向上を目的に添加。 - 炭素(C),クローム(Cr),その他元素の含有量,鋼材メーカーで鋼材の名前が多々あります。
実際は、刃物鋼にとって不純物であるリン(P),イオウ(S)等が含まれています。
これらの不純物を完全に除去することは困難とされています。これらの不純物の含有量によっても刃物の性質(耐摩耗性,靱性,耐食性)に違いがあります。
また、ステンレスは英字で「STAINLESS」と書き、
・STAIN ・・・ 汚れ、しみ
・LESS ・・・ ~がない、~しない
が組み合わさった単語です。ステンレスと呼ばれる物質があるわけではありません。
まれに、「この包丁にステンレスは入っていますか?」と聞かれることがあります。ステンレスの意味から考えるとこの表現はおかしいことがわかります。