包丁あれこれ

刃物鋼について

包丁に使われる材料について

 現在包丁に使われる材料は、鋼(ハガネ)、ステンレス鋼、セラミックとチタン合金に大きく分けられます。業務用包丁としては、鋼とステンレス鋼に大別されます。
 鉄(Fe)に炭素(C)をくわえたものを鋼と呼びますが、炭素量によって呼び名が変わります。  

鋼=鉄(Fe)+炭素(C) 炭素量 0.04~2.00%
炭素量 0.00~0.04%
鋳鉄 炭素量 .00~6.70%

 鉄(Fe)+炭素(C)0.04~2.00%を別名で炭素鋼と呼びます。包丁で製と呼ぶ場合は、この炭素鋼のことをいいます。鉄(Fe)に炭素(C)を加えた鋼は、焼入れ処理(高温に熱し、急冷)により硬くなります。刃物に例えると刃先が変形しにくくなるといえます。そのため、刃物には鉄(Fe)に炭素(C)を添加した鋼を使用します。
炭素量によって、焼入れ処理後の硬さ、強さは異なります。基本的には炭素量が多いほど硬いものになります。しかし、炭素量が1.4%以上は量が多くなっても硬さが増大しません。そのため包丁に使用される鋼の炭素量は、0.2~1.4%がほどんどです。

鋼には鉄(Fe)と炭素(C)のほかに、以下の元素がごくわずかですが含まれます。

ケイ素(Si) マンガン(Mn) リン(P) 硫黄(S)

リン(P)、硫黄(S)は刃物鋼にとって不純物と考えられていますが、鋼材の製造工程においてこれを完全に除去することは困難とされています。
 炭素(C)量が同量であっても、不純物が少量の鋼材は硬くなり,また切削性がよいため、研ぎやすく永切れする刃物になります。不純物が少量の鋼材がより優れているといえるのですが、鋼材が高価になります。

 ステンレス鋼(ステンレス刃物鋼)はこの炭素鋼にクローム(Cr)を10.5%以上加えたものをいいます。

ステンレス鋼=鋼(鉄+炭素)+クローム(Cr)

 このクローム(Cr)は鉄が酸化(錆び)するよりも早く酸化し酸化クローム膜になるため、錆びにくくなります。(「ステンレス刃物鋼について」参照)


 まれに、「この包丁に鋼(はがね)は入っていますか?」と聞かれることがあります。鋼(はがね)の意味から考えるとこの表現はおかしいことがわかります。



ステンレス刃物鋼について

ステンレス刃物鋼について

  一般にステンレス鋼と呼ぶ金属は、SUS304を指します。このSUS304は鉄(Fe)にクローム(Cr)を18%、ニッケル(Ni)を8%を添加したもので18-8と表記したりします。クロームは鉄が錆びる前に酸化クローム膜を形成するため鉄が錆びにくくなります。また、ニッケル(Ni)を添加することで耐酸性が増します。しかしこのSUS304は、炭素(C)が添加されていませんので、焼入れ処理をしても硬くならないので刃物には使用できません。

 刃物で使用するステンレス鋼は、炭素鋼にクローム(Cr)を10.5%以上加えたものをいいます。

ステンレス刃物鋼=鋼{鉄(Fe)+炭素(C)}+クローム(Cr)10.5%以上

 刃物に炭素(C)は必要不可欠で、ステンレス刃物鋼にも炭素(C)が含まれます。炭素(C)は、鋼を錆びやすくする特性があります。より炭素(C)が少ない鋼が錆びにくいものになりますが、高い硬度が得られず切れない刃物になります。逆に炭素(C)を増やすと硬度は高くなり、よく切れる刃物になりますが、錆びやすい刃物になります。

ステンレス製包丁は錆びないのではなく、錆びにくいということになります。

  包丁に使用するステンレス刃物鋼は何種類もあります。

  • 鉄(Fe)+炭素(C)+クローム(Cr)10.5%以上+モリブデン(Mo)
    モリブデン鋼と呼ぶことがあります。
  • 鉄(Fe)+炭素(C)+クローム(Cr)10.5%以上+モリブデン(Mo)+ヴァナジューム(V)
    モリブデン・ヴァナジューム鋼(MV鋼)と呼ぶことがあります。
    モリブデン(Mo)は焼入性、ヴァナジューム(V)は耐摩耗性の向上を目的に添加。
  • 炭素(C),クローム(Cr),その他元素の含有量,鋼材メーカーで鋼材の名前が多々あります。
    実際は、刃物鋼にとって不純物であるリン(P),イオウ(S)等が含まれています。


これらの不純物を完全に除去することは困難とされています。これらの不純物の含有量によっても刃物の性質(耐摩耗性,靱性,耐食性)に違いがあります。


 また、ステンレスは英字で「STAINLESS」と書き、

 ・STAIN ・・・ 汚れ、しみ

 ・LESS   ・・・ ~がない、~しない

が組み合わさった単語です。ステンレスと呼ばれる物質があるわけではありません。

 まれに、「この包丁にステンレスは入っていますか?」と聞かれることがあります。ステンレスの意味から考えるとこの表現はおかしいことがわかります。





錆について

錆について

 人間が使用している金属のほとんどは、鉄に限らず酸化しています。いわば錆びている状態が安定した状態です。
鉄は常に錆びようとしています。
 錆びには空気中の酸素(O2)が作用してできる黒錆び(写真右)、水分(H2O)が
作用してできる赤錆び(写真下)とがあります。
 黒錆びは、包丁の表面が灰色になる錆びで、酸化被膜です。この膜ができると
赤錆びが出にくくなります。

 一方赤錆び(左写真)は、包丁の表面に赤茶色のブツブツの錆びで、この錆びは放置すると、包丁の奥へと浸透しますので発生したらすぐに除去する必要があります。特に刃先にこの赤錆びが発生すると何回研いでも錆びによってできたブツブツがとれなく、刃が付きません。また、塩素(Cl)は、鉄を浸食する作用があるため、包丁にとって大敵といえます。しかし、料理にはこの塩素を含む塩は必要不可欠であるため、塩素が付着することは仕方のないことです。塩が付着したらすぐに取り除く必要があります。
塩素は消毒の作用があるため水道水にも含まれていますので、包丁の使用後は水分を充分に拭き取り保管する必要があります。


 ステンレス製包丁でも錆びることはあります。この場合は黒さびではなく赤錆びが発生します。塩素(Cl)と水(H2O)によるものですので、ステンレス製包丁でも使用後は、充分に水分を拭き取り保管してください。また、食器洗浄機は酸化被膜を洗浄してしまいますので、錆びやすい状態になります。食器洗浄機での洗浄はあまりお勧めできません。



包丁の用途

包丁の用途

包丁には様々な長さ,形があります。ここでは代表的な使い方を記しています。記載以外の使われ方もします。

和包丁

出刃 魚の骨の部分を切る時,三枚に卸す時に使用。あごに近い部分で骨等の硬い部分を切り分け、刃先で魚を三枚に卸し(切り分け)ます。
刺身 出刃で魚を三枚に卸した後、刺身にする時に使用。柳刃(やなぎば),正夫(しょうぶ)とも呼ばれます。
蛸引 刺身包丁の関東型。蛸専用というわけではありません。
薄刃 野菜を切る,剥く,刻む等に使用。
鮭出刃 鮭を切る時に使用。出刃包丁に比べ峰は薄く,軽い
身卸出刃 魚を三枚に卸す時に使用。出刃包丁に比べ刃(峰と刃先)の巾が狭い。


洋包丁

ペティー 果物,野菜等の皮むき・飾り切り等に使用。
牛刀 野菜,肉,魚等に使用。洋包丁の基本形。
筋引 肉の筋を切り離す時に使用。
三徳 牛刀と同様。牛刀と菜切りの中間の形状で刃先の尖りが少ない。万能包丁,文化包丁とも呼ばれる。
洋出刃 蟹,エビ等の処理に使用。牛刀に比べ厚みがあり重量感がある。
和出刃 出刃包丁と同様。
骨透角
(ホネスキカク)
肉と骨を切り離す時に使用。鯵等の子魚にも使用。サバキ,サバキ東(あずま)型,サバキ関東型とも呼ばれる。
骨透丸
(ホネスキマル)
骨透角と同様。サバキ関西型,サバキ阪型,サバキ西型とも呼ばれる。
平切
(ヒラギリ)
主に肉を切る時に使用。牛刀と同じ形状で片刃。
頭取
(アタマトリ)
骨透角と同様。刃先が峰に向かって反りがある。
腸サキ 牛,豚の腸を裂く時に使用。切っ先にスレンレス製の玉がある。
ボーニング 骨透角と同様。欧米型


熱処理について

熱処理について

 刃物がよく切れ,長切れするということは、刃先が変形しないことです。そのためには、硬さと粘りが必要となります。鉄(Fe)に炭素(C)を加えると焼入れを行うことで硬さが得られます。鋼材の種類によって温度は違いますが、800℃~1100℃に加熱し急冷することを焼入れといいます。焼入れ処理をおこなうことにより鋼の組織が変わり硬くなります。

 鋼は常温ではP(パーライト)と呼ばれる組織ですが、加熱し変態点と呼ばれる温度になるとA(オーステナイト)と呼ばれる組織になります。
 この組織から急冷するとM(マルテンサイト)という組織になり硬くなります。
 変態点は、鋼材の種類によってことなります。

 焼入れ温度は、鋼材の適正温度でなければならなく、高くても低くてもしっかりとした焼きは入りません。現在は、温度計器でもってこの焼入れ温度を設定します。
しかし、日本刀を製造していた昔は、当然温度計器はありません。そのため、鋼を熱した時の色によって温度を判断していました。そのため、この色を見誤らないよう、焼入れは夜の作業とされていました。

 焼入れした鋼は、硬いのですがもろい、いわばガラスのような状態です。刃先が欠けやすい、また折れやすい状態です。これに、靱性(粘り)を与えるため焼き戻しという処理をします。変態点以下の温度(通常は150~200℃)に加熱し、1時間程保持します。テンパー(tempering)と呼ぶこともあります。
 焼入れの時に、鋼の組織がA(オーステナイト)からM(マルテンサイト)に変わるのですが、少量のA(オーステナイト)組織が残ります。これを残留オーステナイトといいます。これを完全にM(マルテンサイト)組織にするため、サブゼロ処理(焼入れ後 -73℃以下に冷却)を行います。



砥石について

砥石について

T#3000 鋼製包丁の仕上げ用。
T#1500 鋼製包丁の中仕上げ用。ステンレス製包丁の仕上げ用。
T#1000 鋼・ステンレス製包丁の中仕上げ用。家庭用包丁の仕上げ用。
T#320 荒砥用。
T#180 荒砥用。刃こぼれ等がある時に使用。
T#100 極荒砥用。刃欠け等がある時に使用。
修正砥石 砥石の面直し用。

 包丁を研ぐ場合、荒砥石・中砥石・仕上砥石の3点を揃えていれば研ぐ時間も短縮でき良いが刃がつきます。番手(細かさ)は研ぎ感、研ぎ後の刃によりますので好みでお選びください。

 ご家庭でこれから砥石を使う場合は、まず#1000がよいかと思います。#1000は中砥石ですが、家庭用では充分かと思われます。その後、荒砥石#320があると便利です。砥石面の修正にも使用します。2つの砥石面をそれぞれ擦り合わせることで砥石面が平らになります。



ヤスリ棒の使い方

ヤスリ棒の使い方

① 包丁のアゴ(根元)から刃先にかけて( 写真1→写真2) 図1の角度でヤスリ棒 が当たる様に 数回動かします。

② 包丁の裏側を図4の角度 で数回動かします。

①②を数回繰り返します。


<注意点>
・包丁は指先で軽く持ち、接地点に無理な力がかからないように、肩,肘,手首の力を抜いて下さい。
・ヤスリ棒全体を使うように包丁を動かしてください。
・角度を一定に保つように動かしてください。
・刃先が欠けていたり,つぶれている場合は、ヤスリ棒で刃を直すことはできません。砥石等を使用してください。
※ヤスリ棒の使用法はこれ限りではありません。



時効割れについて

時効割れについて

 金属の特性が時間とともに変化することを時効といいます。焼入れした鋼は時間とともに安定した状態に戻ろうとします。安定した状態にもどる時に、歪(ひずみ)を生じて亀裂が入り割れ(折れ)が発生することを時効割れといいます。

 鋼は焼入れによって金属組織がオーステナイト組織からマルテンサイト組織に変わります。しかし、100%マルテンサイトにかわるのではなく少量のオーステナイト組織が残ります。これを残留オーステナイトとよびます。この残留オーステナイトが時間の経過とともに分解するため、応力分布が不均衡(ふきんこう)になり亀裂が発生しやすくなります。

 この時効割れを防ぐ方法として、鋼材に適した焼入れ,焼き戻しを行うとともに、サブゼロ処理(焼入れ後に‐73℃以下に冷却する処理)を行うことが有効とされています。 

  鋼の特性上、包丁は100%折れないということは言い切れません。ヒビ等が確認できる場合は、使用しないでください。



贈り物に包丁

贈り物に包丁を

 結婚式のお祝い、結婚記念日,母の日等の記念日の包丁を贈られてはいかがでしょう。日本では贈り物に刃物は敬遠されがちです。「切れる」を連想するからでしょう。しかし、ウェディングケーキへの入刀,紅白テープのカット等おめでたい時に包丁・ハサミを使用します。また刃物は「未来を切り拓く」ものとして決して縁起の悪いものではありません。
※気にされる方もおみえになると思いますので、仲の良い方あるいは事前に確認をとる等の注意が必要。

ご結婚のお祝い 
 新婚生活になくてはならない包丁。新婦&新郎のお名前入り,日付入りの包丁を贈くられては・・・。 

結婚記念日(11周年)
 イギリスでは結婚11周年の記念日を鋼鉄婚式と呼び、鋼鉄製品(包丁,鍋等)をプレゼントする習慣があるようです。「鋼のように強い愛で結ばれて」という意味が込められています。お名前入り,日付入りの包丁を贈られては・・・

御希望のお客様には、無料でラッピングさせていただいております。

詳細は、注文時ショッピングカートにてお選びください。



包丁の各部名称

包丁の各部名称







 
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